青の祓魔師 雪男のメンタルについて考える。

「悪魔は常に否定する快楽の求道者であるのに対して

人の営みは中道にして病みやすい」

「さあて どちらへ 進もうか」

 

第4巻 第13話「やさしい事」より。

 

ジャンプSQ(スクエア)で連載中の漫画、

青の祓魔師エクソシスト)についての、

かつてブラック企業で病みかけた

会社員のつぶやき。

 

25巻まで一気読みした時点での感想です。

 

ネタバレあり。

時々自分の根暗な部分と

登場人物がごっちゃになってるので

そこはご了承くださいませ。

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というわけで、

この漫画で一番気になるのが

主人公、奥村燐の双子の弟、

奥村雪男

 

好きか嫌いかと言われると、

好きだけど、

雪男のダークサイドが

昔の自分に似てて、

あーすごいわかる」と同時に

ゾッとする。

でも目が離せない。

そんな感じ。

 

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「・・・お前 いい祓魔師の条件って知ってるか?」

(中略)

「それもそうだけど

一番は 自分に正直で 感情を溜めないことだ」

 

「悪魔は 溜め込んだ鬱憤や 強烈なストレスに

つけ入ってくるからな」

「それでいったら燐は いい祓魔師になれる素質がある」

 

「逆にお前みたいなのは危ないな」

「・・・いかにも悪魔落ちするタイプだ」

 

第4巻 第15話「どいつも こいつも」 シュラの話より。

 

優秀な祓魔師だけど、

メンタル的には

自分を出さないから

感情をため込んで

悪魔落ちしやすいと言われる性質。

 

 

初登場時点では、

主人公と同じ15歳。

途中で誕生日を迎え、16歳になる。

 

小さい頃は体が弱くて泣き虫で

いじめられっ子だった。

よく、兄の燐に助けてもらってた。

性格はマジメで努力家。

勉強はできて

高校では、新入生代表でスピーチをしたりしてる。

 

高校生になった彼は、

背が高くて、知的で、クールで、

親切で、優しくて、女子にモテる。

 

幼少期に、養父の藤本獅郎から、

「・・・雪男 神父(とう)さんと一緒に

戦わないか」

「闇に怯えて 生きるより」

「強くなって」

「人や 兄さんを 守りたく ないか・・・?」

のコトバで祓魔師(エクソシスト)を目指す。

 

 

祓魔師(エクソシスト)としては、

歴代最年少で祓魔師の資格を得た、

対・悪魔薬学の天才と言われている。

 

のちに、左目にサタンが干渉する話があるので、

眼の描写が多い。

(そしてそれが彼の感情をすごく

物語っている)

 

燐たちと同い年なのに、

先生やってたり

仕事してたりするせいか、

どうも高校生に見えない。

祓魔師の制服着てると特に、

20代ぐらいに見えてしまう。

 

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長所と短所は裏表なもので、

 

 

 

自信があるように見えて

実は自己肯定感が低くて、

だけど負けず嫌い(プライドが高い)。

完璧主義。

自分に自信はないけど、

認めてもらいたい。

でも認めてもらっても

自己肯定感低いから、

ほめられてるのはホントの自分じゃない!

とか言って、落ち込むの無限ループ。

 

ひとりでもそれなりに優秀なので、

どうにかできてしまう。

だから、ほかの人よりも

過剰に自分の弱みを見せられない。

 

努力や悩みもは一人で抱えて解決しようとするから、

知識や身体面の技術は身につくけど、

情緒が成長しにくい。

 

マジメすぎて些細なことを考えすぎ。

そして思いつめすぎ。

 

気持ちに余裕があるときは、

みんなに親切だし、

自分以外のみんなの良さを認めているけど、

根底では自分の存在を認めてないから、

積み上げたものが不安定。

 

根はマジメだから

いろいろ頑張ってスキルとか身につけて、

今はもう、小さい頃の

弱かった自分から

変わったはずなんだけど、

自己否定だけは変わってない。

 

だから、いろいろストレスがかかりすぎると、

他の人より脆くなる。

 

青の祓魔師の登場人物たちは、

青い夜の事件とかで、

ほとんどの人が過去に辛い体験をしている。

 

誰が一番つらい体験をしたかってことは、

他人同士で比べてもあまり意味がない。

 

雪男だけ違う病み方をしてるのは、

特につらい体験だったというわけじゃなくて

自分の存在を否定しているからだと思う。

 

 

おそらく、

話が進むうちに、

 

養父で数少ない理解者だった

藤本獅郎が亡くなったり、

いつもそばにいた燐が

仲間を作って成長していって取り残されたり、

働きすぎだったり、

自分で自分をいじめたりしたりで、

だんだんストレスが積み重なっていったんだろう。

 

 

今思うと、

第2話「兄と弟」で、

燐に向かって

「大人しく 騎士團本部に 出頭するか・・・」

「いっそ死んでくれ」

って言ってたところから

すでにその片鱗はあったんだけど、

「強くなりたい」って目標が同じだねって話して、

てっきり和解したのかと思ってたよ。

 

 

雪男は、弱音を吐くことを弱いと思ってるみたいだけど、

弱さが全くないことが強いんじゃなくて、

自分の弱さをさらけ出せることが強さにつながるってことはわかってない。

 

他人(燐とか)が、それをやってることは、強さだって認めてるのに、

自分がそうすることはなぜか認めてない。

 

 

(余談だけど、『鬼滅の刃』の我妻善逸ぐらい、なりふりかまわず

『自分は弱い』とか、戦いが『怖い』とか、『死にたくない』って言ってたら、

雪男みたいな病み方はしないんだろうなあ。

善逸が正気かどうかは別として)

 

 

 

ある意味自分をいじめ過ぎ。

雪男はどうなんだろ、

無意識でやってるのかな?

 

いくら兄を守りたいからって、養父の意志を継ぎたいからって、

同い年の子達の先生やるとかちょっと信じられない。

かなり精神的にストレスかかるだろうな。

しかも、どんなときも先生と生徒の関係は崩さない。

 

燐としえみ、シュラとは、

ちょっとだけ心を開いてたけど

恋愛のからみもあって、

燐としえみが会った瞬間、

まだ2人は何も気づいてない段階で(!)

敏感に何かを察知して、勝手に身を引く。

 

そして、燐が青い炎をコントロールできるようになるとともに、

兄を守るっていう、自分の存在理由がぐらついてきて、

自分たちの出生の秘密を知りたいかどうかの話で意見が分かれて、

説明するより、心を閉ざす方を選んで

勝手に1人になる。

 

 

シュラについては、

途中まで心を開いてるのかなって

思ってたけど、

そうでもなかったらしい。

誰か一人でもいいから

頼れる人をつくっといてほしかった。

まあ、25巻までの時点じゃ無理か・・・・・・。

 

 

少年マンガにはあんまり出てこないタイプ、

特に主人公の味方には。

(敵役なら、こんなキャラもいるかもしれない)

 

 

青の祓魔師」の特徴としては、

そんな雪男みたいなキャラの葛藤を

二十数巻にわたってこと細かに描写しているところ。

 

何なら、

ダークファンタジー漫画としての本編に必要な

その他たくさんの描写を減らして

雪男の葛藤にページを使ってる。

 

 

こういうキャラは

少年マンガにありそうな、

運命や困難に、

師匠や仲間と助け合って立ち向かって成長していく展開になりづらい。

 

本人も自分のせいで周りの人を傷つけてることは自覚している。

でも自分で勝手に決めた制約のせいで、

どうにも身動きがとれない。

 

そして、自滅して、

強制的に開示することになって、

イルミナティに行って、

だけどまだ急に考え方は変わらない。

 

自滅や、病んでしまったきっかけは、左目のサタンの炎かもしれないけど、

サタンがいてもいなくても、

とこかで雪男はそうなったんだろうなと思う。

 

そして、イルミナティに行っても

藤堂のように吹っ切れることはなくて、

生きるのがつらそうな感じ。

 

彼が「ただ生きてもいい」って自分に思えるまでに相当な時間ががかりそう。

 

第93話の、しえみに激昂したあと、

自殺しようとしたことから考えると、

あの状態なら現実世界だと、

精神科受診を検討するレベルかもしれない。

 

しかし、どうも青の祓魔師の世界には

魔障を治療するドクターはいても、

その手のドクターはいなそう。

 

ストーリーの中で

雪男がどう葛藤を乗り越えて、

成長していくのか、

それともしないのか、

続きがとても気になります!